テーマ:社会的身体から理学療法を再考する

第39回東北理学療法学術大会長 藤澤 宏幸

 

 理学療法は治療学としてはじまりました。その意味では、生物学的モデルにおける因果論によって、治療効果を説明することを求めてきたといえます。しかし、医療全般に言えることではありますが、人の健康を対象とするからには、社会的側面に目を向けないわけにはいきません。近年、社会学の立場から身体が語られることが増えてきました。ジンメルの「橋と扉」の考え方にしたがうならば、身体は内側に向かい生物としての命と、外側に向かい社会的生命を宿す表裏一体の二面性を有していると考えられます。理学療法は身体に対してアプローチする治療法であるがゆえに、その二面性を考慮して対象者に接することが求められるのです。一方、社会的身体の側面を捉えるならば、運動行動の階層性に基づいて活動を高める方向性と、死に行く存在としての方向性を考える必要があります。人口減少時代にあって、多くの人が人生の終わりを迎えるとき、理学療法士に何が出来るのかを、死の儀礼を視座に熟慮しなければなりません。

 本大会においては、社会的身体として日本人の行動様式、価値観、死生観について焦点をあて、現代社会において幸せに生きることとは何かについて考えてみたいと思います。社会における行動は行為のレベル、すなわち個人の価値観のもとに行われます。日本のリハビリテーション医療において普及している生活機能モデル(ICF)では、“活動”を行為のレベルとして定義されているのに対して、理学療法士は動作のレベルとして捉えていることが多いように思います。この機会に、理学療法と行為の関係性について社会的身体の観点から再考し、次の時代においても必要とされる成熟した専門職となれるよう皆さんと議論したいと思います。

 

図1